2008年6月10日から9月21日まで、東京国立博物館で「大日如来坐像」が展示されている。この像こそ、今年3月にニューヨークのオークションに出品され、仏像としてはオークション史上最高値である1、280万ドル(当時約12億5千万円)で日本の仏教教団・真如苑が落札し話題を呼んだ「大日如来坐像」である。ここ数年仏像ブームといわれ、仏教や仏像への関心が高まっているさなかでの、「あわや海外流出」という騒ぎであった。この像は調査の結果、鎌倉時代を代表する仏師・運慶の作である可能性が非常に高いとされており、それが本当ならば重要文化財クラスの仏像である。国宝・重文も含めて13件31躯しか特定されていない運慶作の仏像が、なぜ突然海外で競りの表舞台に登場したのか?本当に運慶作なのか?そしてこの仏像はどの様な経緯をたどって世に現れたのか?
今から5年前、東京国立博物館宛に送られてきた仏像のスナップ写真。そこに映し出されていた個人所有の大日如来座像は顕著な運慶様式を示しており、当時研究員として勤務していた山本勉は大きな衝撃を覚えた。山本はX線撮影と文献的な考察を加えてつぶさに調査を行なった上で「新出の大日如来坐像と運慶」と題した論文を発表し、運慶作の像である可能性が極めて高いと結論付けた。
運慶は、写実的で豪快な作風で鎌倉彫刻といわれる様式を確立させた第一人者。代表作として、門弟・快慶との合作による東大寺南大門の「金剛力士像」などがある。海外流出を免れ、東京国立博物館に展示された、運慶作と云われる大日如来像。一体だれが、なんのために彫らせたものなのだろうか?
流転の仏像に秘められた謎が、明らかになる。
【スタッフから】
間近で見た大日如来像の、彫刻技法の素晴らしさと、言葉にはしづらいオーラのようなものとに圧倒されて、掌が自然に汗ばんでくる、という滅多にない経験をしました。また、像が彫られた経緯と歴史背景を探っていくうちに、彫らせた人物の深い思いと強い決意も視聴者の皆さんに知って欲しい、と考えるようになりました。
番組では東京国立博物館で見るよりももっと近くでこの大日如来像を見られます(笑)。ハイビジョン映像で細部までじっくりとご覧ください。
NHK BS-hi(衛星ハイビジョン)
2008年9月8日(月) 22:00 – 22:45
2008年9月13日(土)17:00 – 17:45
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