気候も涼しくなってきて、食欲がムンムンと出るようになった。
色気じゃなくて食い気がムンムン…そんなときはカツ丼を食べるに限る。それも夜ではなく、ビジネスアワーの昼に食べるに限ると思う。しかし、一人でカツ丼を食べるのはさびしい…そこで、部でも有数の「早飯マン」を誘ってみた。
「ここはぜひとも早飯のテクニックを盗みたい」
幸い彼もカツ丼を欲していたとのこと。早速、近所の蕎麦屋へと向かった。M屋のカツ丼は1年ぶりである。以前は確か「並」「上」の二段階だったと思うのだが、今は、かけ蕎麦つきのものしかない。そして値段も「並」で想定していたものより500円くらい高かった。人一倍食事に時間がかかるうえ、4ケタのカツ丼はちょっと…とたじろいだのだが、彼の「折角カツ丼のために来たのだから」という言葉をうけて、えいやっと注文をした。そして待つこと5分、店員さんが恭しく黒塗りのふたつきの器を持って登場。
「お待たせしました。カツ丼です」ふたを開けると、湯気と甘い香りがぶわーんと立ち上る。黄色い卵の上にはグリーンピースがころころと乗っかっている。ああ、M屋のカツ丼!
「いただきます」と言って、さてどこから箸をつけようか…と悩む。と、彼の方を見ればもう一つ目のカツをほおばっていた。そして間髪いれずに下の飯を持ち上げ、口へと運んでいく。口の中に入ったカツ丼は、滞ることなく体内に運ばれているようだ。「…噛んでるかな?ゴクンて呑んでないよね。ゴクンがないということは噛んでる?噛むスピードはどうよ?1秒間に3回くらい?自分は?1秒間に2回か…結構しんどいなあ」カツを噛み千切り、飯をすくい、蕎麦をすすりながら考える私。しかし、無言はいけない。折角2人で食べに来たのだからと、お互いの故郷の話などして(それもなるべく相手に多く話させるようにして)和やかなうちに食事は終わった。それも彼のだけ。
蓋を開けてから9分。当然、そばつゆも飲み干していた。こちらはまだ丼の半分ぐらい。飯粒が汁を吸ってしまわないうちに食べないと、どんどんカサが増えてしまうというマズイ状況である。すべてが終わって手持ち無沙汰の彼を前にして、なるべく急ぎ目に食べたのだが、結局自分が食べ終えたのは、蓋をあけてから20分後だった。「僕、あんまり噛まないから早いんですよ」と彼。そうかな?懸命に噛んでいたようだけど。それに、噛まない人ってデブになりやすいと聞くが、彼は割合スリムである。そして彼以上に早食いという某ディレクターもまた、スリムで有名だ。そして自分はというと、こんなにゆっくり噛んで食べているにもかかわらずデブである。
M屋のカツ丼を二人で楽しく食べられたことには大いに満足しているが、彼の早食いのテクを盗むことが出来ず、その上「早食いデブ説は本当か?」と新たな疑惑が浮上してしまったランチであった。
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